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黄昏色の樹の下で |
一章 十七話 |
宿に戻ったウィドは部下に休むように言い、自身も部屋へと戻った。ウィドはマルテと相部屋だった。 「なかなか良い教育をしているな」 あそこであっさりと手土産を受け取る騎士だってざらにいるのに、詰め所にいた騎士は手を出そうとはしなかった。周囲が驚く中で受け取っていた騎士は、ウィドとマルテの正体に気づいていたのだろう。すぐに使いが来るはずだ。 「こうなってくると、いろんな所で商人の格好をして同じことをしてみたくなるな。賄賂を受け取るか受け取らないか試してみたい」 意地悪そうな顔でウィドは笑った。 「中隊長も試されるかもしれませんよ」 マルテは呆れ顔で言い返したときにノックがした。それはまずゆっくり三回ノックされて、その後一泊置いてから今度は早めに四回。 「お」 マルテがドアを開けると、そこには緊張した面持ちの若い騎士が一人いた。 「はじめまして。朱金の隊のアレンと申します」 アレンは憧れの目を二人に向けていた。 「さっそく、最初に見た村の様子を教えてもらいたい。確か君は実際に村を見た一人なんだよな?」 そう前置きしてアレンは村の様子を話し始めた。何度も聞かれて答えたことなのか、アレンの説明によどみはなく、ウィドやマルテの質問にもすらすらと答えていた。 「本当に大差ないな。しかたがないか」 申し訳ないようにアレンが縮こまる。 「アレン、今日の夜に宿舎へ行きたいのだが、いいかな?朱金の中隊長にお願いした物資などを受け取るてはずを整えたい。あと、白に一時組み込まれる奴らの顔も見ておきたい」 今日着いたばかりなのに……とアレンは密かに思ったが、これくらいのタフさがなければ白の隊ではやっていけないのかもしれない。 「んー。なかなか元気な小僧だなぁ。15くらいか?」 ウィドはくつくつと笑う。 「本当に元気ですね。あんな子どもが僻地の任務で頑張っている姿を見ると、私もしっかりせねばと襟を正す思いです」 後日、発育不良気味のアレンが実は18歳だと聞いて、二人はアレンに後ろめたそうに菓子をあげていた。ひそかに、詫びのつもりだった。アレンは事情も知らず、素直に喜んでいたが。 日が落ちてから、ウィドは騎士の宿舎へと赴き、今後の計画を伝え、白の隊に組み込む予定の騎士と顔合わせ等を夜遅くまで行ってから宿へと戻った。 翌朝。朝早くに宿を出て、馬車で村をたった。目指すのは最初の目撃者がいる村だ。 この時期には珍しく、陽気な日差しだった。 |
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